心房細動ってどんな病気?
心臓は電気信号によって規則正しく動いている
心臓は筋肉(心筋)でできています。
心筋を順序良く規則的に動かすために、右心房の洞結節という部位から電気信号が出ています。
そのおかげで、心筋は1分間に60回~100回程度、規則正しく収縮と拡張(拍動)を繰り返しています。
洞結節の電気信号は房室結節(心房と心室の中間)を通り心室(心臓の下の部屋)に伝わります。
電気信号が心房から心室へ伝わることで、まず心房(心臓の上の部屋)が収縮し、心房内の血液が心室(心臓の下の部屋)に送られ、そのあと心室が収縮し全身に血液が送り出されます。
このように心房の電気信号が心室へ1:1で伝わるのが正常の心臓の動きです。
心房細動はこんな病気
心房細動とは、心房のあちこちで異常な電気信号が複数発生します。
正常であれば1分間に60~100回程度だった心房の電気信号は、心房細動になると350~600回程度と非常に速いため心房が小刻みに震えている状態になります。
この非常に速い心房の電気信号がすべて心室へ伝わるのではなく、ときどき伝わります。
そのため心室の収縮するリズムがバラバラとなり、脈と脈の感覚が不規則になります。
「不整脈なんて言われたことない。」「何ともないから大丈夫。」と思っている方も注意が必要です。
不整脈の中で心房細動は最も患者数が多く、2030年には108万人を超えると予想されています。
また高齢になればなるほど心房細動を発症する割合が増えるため、高齢化がどんどん進む日本において誰しも直面する可能性が高い病気です。
心房細動の症状
心房細動を発症すると
- ドキドキする、胸がザワザワする
- 胸が苦しい
- 普段と同じ生活をしているのに疲れやすい
- 普段と同じ生活をしているのに息が切れる
などの症状を訴える方が多いです。
ですが症状を感じない方も約40%程度いるため、知らないうちに心房細動になってしまっていたという方もいます。
とはいえ、より心房細動になりやすい、関連が深いと言われている病気や習慣があります。
心房細動になりやすい人の特徴
- 加齢(有病率が80歳以上の男性は4.43%、女性は2.19%)
- 高血圧がある
- 心不全と言われたことがある
- 糖尿病がある
- 肥満(BMI:25以上)がある
- 睡眠時無呼吸症候群がある
- 尿酸値が高い
- タバコを吸っている
- アルコールを習慣的に飲んでいる
心房細動の合併症
心房細動になったらすぐに命に関わるというわけではありませんが、放置しておくのは得策ではありません。その理由が心房細動によって引き起こされる合併症です。
塞栓症(脳梗塞など)
血液は流れていないと固まる性質があります。
心房細動を発症すると心房は小刻みに震えている、つまり心房は収縮していない状態のため心房内の血液は心室へ流れていかず「よどみ」が生じます。
すると心房内は血栓(血の塊)ができやすい状態になります。
心房の中でできた血栓が血液の流れに乗って脳の血管に詰まってしまうと脳梗塞を、足の血管が詰まってしまうと下肢急性動脈閉塞症を引き起こします。いずれも命に関わる重大な病気です。
心房細動が原因の脳梗塞は、高血圧や動脈硬化が原因で発症する脳梗塞に比べて脳がダメージを受ける範囲が広いという特徴があります。
脳へのダメージが大きいということは麻痺などの後遺症が残り、寝たきりや日常生活に介護が必要になる可能性が高いため、それを未然に防ぐために心房細動の治療を受けることは重要です。
心臓の機能が低下する(心不全)
全身に血液を送り出し循環させるポンプとしての役割をメインで行っているのは心臓の下の部分、心室です。
心房は心室へ血液を送り込む補助ポンプの役割を担っています。
そのため心房細動で補助ポンプの機能が得られないと心臓の機能は15~20%程度低下すると言われています。
また心房細動になると脈が速くなる(頻脈)場合が多く心臓は仕事が増えます。
しばらくは体調に変化がなく症状を感じなかったとしても、心房細動で頻脈の状態が長く続くことで心臓は疲れてしまい、ついには心不全となってしまう場合があります。
一度低下して心臓の機能が完全に元の心臓に戻るころはないため、心不全は治る病気ではありません。
そのため症状がなくても心房細動を放置せず検査や治療を受けましょう。
心房細胞の治療
内服薬による治療
心房細動によって速くなった心拍数を調節する薬や心拍数が規則正しくなるようにする薬(抗不整脈薬)があります。
心房細動以外の病気や自覚症状、心拍数によって心拍数を調節する薬や抗不整脈薬は使用しない方もいます。
また心房細動の合併症、血栓ができてしまうのを予防するために抗凝固薬といういわゆる「血液をサラサラにする薬」が処方されます。
カテーテルアブレーションによる治療
心房細動の原因となっている異常な電気信号を出している心臓の筋肉に対し、専用のカテーテルで「やけど状態」もしくは「凍傷状態」にすることで心房細動が出ないようにする治療です。入院での手術となりますが、最近の報告では根治率が70~80%と高く、飲み薬を減らせる可能性や心不全を合併している患者さんの状態が良くなることがわかっています。